発達凸凹(障害)とは?

発達凸凹児ー自閉症スペクトラム症の子の特性と家庭でできるサポートについて

ASD自閉症(スペクトラム)とは

自閉症やアスペルガー症候群などが統合されてできた診断名です。ベースとなる病態は共通していますが知的レベルや言葉の遅れなどで違いがみられます。

アスペルガー症候群 高機能自閉症 自閉症
知的障害の有無 ない ない ある
ことばの発達の遅れ ない ある ある
コミュニケーションの困難度 少し困難 困難 とても困難
こだわりの有無 ある ある ある

またコミュニケーションが苦手なことや、興味・行動の強いこだわり、本音と建前やたとえ話が理解できず対人関係がうまくいかないなどの特徴があります。

自閉症スペクトラムの原因はまだ解明されていませんが、脳の側頭葉、前頭前野、偏桃体などの働きの低下が何らかの関連があるのではないかと考えられています。

多くの場合、他の障害を併存するため多面的なアプローチが求められ支援にも難しさがあります。

凸凹児の癇癪

そのため、自閉症スペクトラムであることに早く気づき、適切な支援をすることが大切です。早く気づくことができれば適切な支援を早く始められることができ、子どもの困り感を軽減させることができるからです。

 

乳幼児期の気づきのポイント

ASDの子の特性チェックリスト

【乳児期】

    • 抱っこをいやがったり、あやしても笑わない。
    • 人見知りをせず、後追いをしない。
    • 名前を呼ばれても振り向かない、指差しをしない。

【幼児期】

  • 発語が遅く、大人のまねをしない。
  • 同じパターンにこだわり特定のものしか食べられなかったり、同じ服を着ることにこだわる。
  • 手のひらをヒラヒラさせる、クルクル回るなどの常同行動が見られる。
  • 聴覚過敏や触覚過敏、また痛みを感じにくいなどの低感覚がある。
  • その場の空気や表情から他者の気持ちを読み取ったり想像することが苦手。
  • こだわりが強く、急な変化に対応することが苦手。

気づきが遅れることで支援が遅れ、二次的な問題が生じる可能性もあります。

診断基準についてはこちらのサイト(厚生労働省 eヘルスネット)も参考になると思います。

「自閉症スペクトラム」かもしれないと思った時には自治体の発達相談の窓口で相談をすることをおすすめします。

医療機関の受診や療育の必要性などについてもアドバイスがもらえると思います。

家庭でできるサポートは?

自閉症スペクトラムの根治療法はありませんが、生活上の困難を減らしたり、本来持っている能力を発揮できるように工夫をすることは可能だと思います。

ここでは家庭でできるサポートについて考えてみたいと思います。

落ち着いて過ごせる生活環境づくり

自閉症スペクトラムの子どもは、キッチンは食事をするところ、寝室は寝るところなど、場所と目的を結びつけてとらえています。

場所と目的が決まっていれば子どもは安心し、目的に合った過ごし方をすることできるのですが、子ども部屋のように勉強をする場にも遊び場にも寝る場所にもなるといった多目的な空間は、何をすべき場所かわかりにくく混乱し不安になってしまうのです。

凸凹児子ども部屋

環境づくりのポイントとしては、子どもが家庭で安心して過ごせるように、できるだけ目的のはっきりとしたスペースを作るようにします。難しい場合にはパーテーションや本棚、タンスなどでスペースを区切ること等も有効です。

自閉症スペクトラムの子どもは視覚刺激にとらわれやすい傾向があるため、別の空間に目が行き気が散ったり不安になったりすることのないように工夫することも大切です。

物はなるべく減らし、学習する空間では、今の学習に必要なもの以外は机の上に出さないようにし本立てなどにも別の教材を置かないようにします。

同様にピアノの練習をするときは今弾いている曲の楽譜以外は視界に入らないようにし、ピアノの上にぬいぐるみや置時計、他の楽譜などを置かないようにしましょう。

また変化を受け入れにくいため、部屋の模様替えはできるだけしないようにすると良いでしょう。

 

生活時間のパターン化、見通しをもたせる

自閉症スペクトラムの子どもは、規律や時間をきっちり守ることは得意なため、1日の生活パターンが決まっている方が気持ちも安定し、落ち着いて活動することができます。

反対に不規則な生活サイクルや急なスケジュール変更などは不安が強くなったり、パニックになることがあります。

1日の生活パターンや1週間のスケジュールなどスケジュール表などにして掲示し、視覚的にわかるようにしておくと子ども自身で見通しを立てることもでき、より安心することができます。

聴覚よりも視覚が優位であるため、スケジュール表を作るときは、わかりやすい絵を用いることで文字を読むことが苦手な子どもも理解しやすいでしょう。

さらに時間をイメージしやすいように時計盤やタイムタイマーなどを利用すると見通しが立ちやすくなります。

タイムタイマーは"時間を見える化"し、時間間隔を養うことが出来ます。

例えば、こだわりが強く、行動の切り替えをスムーズにできない子どもは、突然「ゲームはもう終わりよ、片づけなさい。」と指示をされることでとまどい、不安になりパニックになることがあります。

まずは「7時になったらご飯にしましょう。」と前もって知らせ、それまではゲームをしてよいと約束をすることで、子どもはタイムタイマーを見ながら見通しを立てることができ次の行動へ移る心の準備ができるでしょう。

叱らずにうまくできた時にほめる

親が子どもを叱る時、普通であれば子どもに反省を促し同じことを繰り返さないようにするためだろうと思います。

しかし自閉症スペクトラムの子どもは感じ方や考え方が普通とは違うため、叱られたことで同じことをしないという反応は期待しにくく、何度でも繰り返す可能性があるのです。

場合によっては叱られることでパニックになったり強い不安や恐怖を感じることもあり、叱ることが逆効果となる場合もあるのです。

問題行動は無視するのが良いとわかっていても、時と場合によっては難しい時があるかと思います。例えば公共の場などで、大きな声をあげたり走り回ったり、かんしゃくを起こした場合、人の目も気になります。

まずはどんな時に問題行動を起こすことが多いのか、不安や緊張からくるものなのか親の気を引きたい時なのか、原因を考えてみましょう。その上で、問題行動を前もって回避することによって叱る状況を作らないことも大切といえます。

また、問題行動を終わらせることが出来た時にはすぐに褒めることでよい行動を伸ばしていき、問題行動をしてもメリットがないことを子どもは学習し、成功体験を重ねることで問題行動が減少していくのです。

 

気持ちを言葉で表す練習をする

コミュニケーションにおいては、自分の気持ちや考えを相手に示す必要がありますが、自閉症スペクトラムの子はうまく意思表示ができないことがあります。

ことばがうまく話せないからなのか人前では話すことが苦手だからなのか自分の意思を的確に把握できていないからなのか、その原因は様々です。

感情とことばを結びつけられるようになるとストレスが減り、気持ちも安定します。

・絵カードなどのツールを使って表現させる。
・質問者がいくつかの選択肢を提示して選ばせる。
・子どもがどんな気持ちでいるのか、親が察して代弁するなど

このようなサポートにより、子ども自身も理解してもらえたと安心でき、気持ちも安定させることができるようになります。

苦手なことを強要せず得意なことを伸ばす

苦手なこと、不得意なことがある時、普通の子どもに対しては苦手を克服し乗り越えさせるような支援が有効である場面もあるでしょう。

しかし自閉症スペクトラムの子どもにとっては苦手の原因が努力不足からくるものではなく障害の特性からくるものが多いため、不快感や痛み、不安や恐怖を伴う場合もあり、さらに苦手意識が高まる可能性もあるのです。

ただでさえ苦手なことがたくさんある自閉症スペクトラムの子どもにとって、園や学校などの集団生活の中ではストレスを抱えやすいといえます。

家庭においても不得意分野の克服を求められたら大きなストレスや自己嫌悪に陥る可能性もあるのではないでしょうか。

子どもが好きなことに没頭し、精神的に安定できる時間を確保するためにも打ち込めるものを見つけるのは大切といえます。

居心地が良いと思える習い事が見つかれば、学校と家以外にも居場所が見つかり、また社会経験の場も増えるでしょう。

 

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